カナダ東部の旅2 モントリオール・プリンスエドワード島編


モントリオールのマック店舗は石造り。さすが!


 寝台車はお気に入りの交通手段だ。ガタゴトと揺られつつ横になって車窓から見上げる夜空は旅情をそそるし、移動と睡眠を兼ね備えているので時間と宿代の節約にもなる。ただ、たまに揺れが激しいので、私のように立ってでも眠れるタイプでないと睡眠不足を招くかもしれない。そんな寝台車最大のお楽しみは朝食だ。以前マレー半島を縦断した時に利用したタイの寝台車の朝食が美味だったので、今回のVIA鉄道でも迷わず朝食付きのプランを選んだ。これがまたアタリである。温かいオムレツにパン、フレッシュなチーズ、スウィーツ、個別包装された瓶入りのジャム、そして飲み放題のコーヒー、紅茶にホットチョコレート・・・。柔らかな朝日が差し込む車窓のもとで食していると、もう永遠にモントリオールには到着しなくてもいいと思えるのだった。 

 6日目の午前、モントリオールに到着。カナダでありながら、フランス語圏としてパリに次ぎ世界第2の規模を誇るこの都市は、英語表記よりもフランス語表記が優先されている。街の通り名も、駅名も、道行く人の言葉もフランス語。英語が通じないことはないが、学生時代に第二外国語としてフランス語を専攻し、卒業と同時に記憶から抹殺した者としては肩身が狭い。街並みはやはりというかヨーロピアンテイスト満載である。石畳の道に壮麗な教会、マクドナルドまで石造りなのには感慨を覚えた。小道には画家の作品や手作りのアクセサリーが並び芸術の薫りが漂うのも、昔訪れたパリを思い起こさせる。噂によると近くのケベック市まで足を延ばせば、更にディープなフランス系文化が待っているらしい。

 そして8日目。最後にしてこの旅のハイライト、プリンスエドワード島へ。もちろん「赤毛のアン」ゆかりの地を巡るためである。この小説の大ファンの私は小学生時代にシリーズをほぼ読破し、映画も最新版まで見た(愛らしい主演女優の急激な老けぶりにはビックリである)。自分も幼少の頃は“みにくいアヒルの子”のような姿をしていたので、コンプレックスに負けず健気に振る舞うアンに共感したのだ。同じようにアン好きのあなたなら是非、キャベンディッシュのアボンリー村を訪れよう。アンが通った学校や教会が再現され、一日中道端でミニ芝居が行われていて、まるでアンが現代に実在しているかのような錯覚に陥る。貸し衣装でアンになりきれるのもたまらない。島には他にも、小説に登場する森や湖が保存されている。舗装された道路やテーマパークなどがファンタジーの風情を少々そぐが、どこまでも広がる草原に牛や馬がいるのどかな風景、見たこともないような夕焼けの色が、アンの世界にどっぷりと浸らせるのである。

 夢見心地で真夜中のバンクーバーへと戻ってきた私を待ち受けていたのは、飛行機に預けた荷物の遅延という事態だ。中に家の鍵を入れていたので途方に暮れると共に、遅延の補償をしようとしない航空会社に怒り心頭である。9日間に及ぶ旅の最大の収穫は、某大手カナダ系エア・ラインには2度と乗るものかという教訓であった。