会社を辞めてカナダ留学

30歳目前でバンクーバーに留学した、渡辺真由子の日々。途中でハワイにも留学☆ 初出:『現役ジャーナリストが語るカナダ大学留学レポート』(スペースアルク、2005~2006) Report of Study Abroad in Canada by a Japanese Journalist

カナダで寮に住むということ


シアトル旅行にて。スタバ第1号店


海外での寮生活は昔からの憧れだった。部屋代は安いし校舎に近いし、なんといっても様々な国籍の学生たちと知り合えるのが魅力的ではないか。基本的に、大学付属の語学学校に通う場合では入寮資格は得られない。正規の学生にのみ与えられる特権なのだ。私が正規の学生を目指してひたすら勉強に励んだ動機の40%くらいは、この“寮生活願望”が占めていたといっても過言ではない。
 さて、そんな熱い思いで手に入れた寮生活。家賃は食事なしの個室で月4万5千円ほど。同じ階に住むのはカナダ、中国、トルコ、インド、ベトナム、韓国、そして唯一の日本人の私という多国籍な顔ぶれの女子と男子である。・・・そう、この寮は男女混合なのだ。それだけならまだいいが、なんとトイレやシャワーも一緒に使うのである。海外ドラマ「アリー・myラブ」でも女性と男性がトイレを共有していたが、私の寮ではトイレがある一室にシャワーと洗面台も併設されている。このため、女子が花の香りのソープに包まれて顔を洗っているすぐ横で、男子が高らかなサウンドを響かせながら用を足していたりする。もちろん、朝イチのトレパン姿でひげを剃る男子の背後で、女子がシャワーを浴びていることもある。日本人の感覚としては盗聴・盗撮その他の事件が起きてもおかしくないのではと思えるのだが、こちらではそんなことはない。「別に気にしないもんね」とお互いあっけらかんとしたものだ。さすがはオープンな国カナダの大学、これも健全な青年育成のための一環だろうか。日本では異性への興味が歪んだ形で表れる犯罪が後を絶たないが、教育現場で女子と男子の生理的な部分を隠し合ってきたことも一因かもしれない、と感じさせられる。
 この寮は食事が付かず、しかも山の上なので近くにコンビニや定食屋などあるはずもなく、学生たちは自炊せざるを得ない。共同で使うキッチンでは誰が何を洗ったのかわからないベチャベチャのスポンジなどを使い回すので、きれい好きな人には耐えられないかもしれない。そんな場所でも、女子も男子も様々な調味料を駆使して凝った料理を作る。旦那にするなら寮出身者はイチオシだ。ちなみに和食好きが多いカナダ人は、日本人はみな寿司を作れると思っているらしく、作ってくれとせがまれることが度々ある。私は握りはおろか手巻きも散らしも稲荷も作り方を知らないため、「日本じゃスシ職人になるには10年かかるんだ」と言ってその場を切り抜けているが、カナダに来るなら多少は作れるようになっておくことをお勧めする。
 寮に暮らす限り、騒音や汚損といった問題は付きものだ。それでも他の学生たちと話す機会が増えるので英語の勉強になるし、賑やかな環境は留学生活の孤独感を吹き飛ばしてくれる。すっかり寮生活が気に入った私は、来学期は別の寮に移る。今度は一戸建てを4人でシェアするタイプだ。新しい寮での暮らしも、いずれお伝えできるだろう。